新国の来シーズンの演目とキャストが発表になったので、
全体の主要キャストをざっと見ていきましょう。
演目とキャストの詳細についてはコチラを参照ください。
長くなるので、複数回に分けて記事を書いていきます。
<修道女アンジェリカ/子どもと魔法>
【修道女アンジェリカ】
アンジェリカ:キアーラ・イゾットン
公爵夫人:マリアンナ・ピッツォラート
【子どもと魔法】
子ども:クロエ・ブリオ
プッチーニ三部作の1つであるアンジェリカと、ラヴェルのオペラを併せて上演するというのは中々面白い試みですね。
Chiara Isotton
あまり良い音質の音源がないので何とも言えないのですが、
2015年の演奏と比較すると、2020年の演奏はかなり発声的な面で無駄な力が抜けた印象を受けます
2015年の演奏
Marianna Pizzolato
バロック~ロッシーニ作品を得意としているので、プッチーニ作品を歌っているイメージがあまりない歌手なのですが、厚みのある声でありながらも薄い響きを上手く使った繊細な表現もできて、当然アジリタも得意としているピッツォラートは間違えなく現在を代表するイタリアのメゾソプラノの一人でしょう。
Chloé Briot
技巧的な曲を歌っている音源がなかったので、高音を楽々出せるような印象をこの演奏からはあまり受けないのがちょっと心配。
フレージングという面では丁寧な歌唱をしていると思うのですが、如何せん声が掠れる場面が散見されるのでちょっとどうなのだろう・・・
子供と魔法と言うと、どうしても学生時代にこの作品を知ったドゥセイの演奏を聴いた時のインパクトが大き過ぎて、ブリオがどの程度歌えるのかは正直YOUTUBEの音源からは未知数。
Dessay – Ravel- L’Enfant et les sortilèges
<シモン・ボッカネグラ>
シモン・ボッカネグラ:ロベルト・フロンターリ
マリア・ボッカネグラ(アメーリア):イリーナ・ルング
ヤーコポ・フィエスコ:リッカルド・ザネッラート
ガブリエーレ・アドルノ:ルチアーノ・ガンチ
パオロ・アルビアーニ:シモーネ・アルベルギーニ
Roberto Frontali
安心して聴いていられる現代を代表するヴェルディバリトンですね。
若い頃より声に深みが加わって、この人は聴いてハズれない。
Irina Lungu
ロシア系の歌手に多い籠り気味な声なのが気になるところではあるのですが、
最近の演奏を聴くと、かなり高音はクリアになって繊細な表現ができているので、中低音がどの程度開いた声になっているか?という部分で良し悪しがかなり分かれそうな印象。
Riccardo Zanellato
レガートが甘くフレージングが見えないので正直好きになれない歌手です。
フロンターリと比較すると明らかに釣り合わない。
Luciano Ganci
現在活躍しているスピントの中でも最も好きなテノールかもしれません。
とにかく言葉のレガートが素晴らしくて、母音がとても美しい。
劇的な作品を歌っても決して吠えないし、ディナーミクも自在。
この人、高音を出す時、一瞬口をかなり横に開いた後で整える、
音の入りだけ”a”の口で直ぐに”o”の母音にするみたいな感じのことをするんですが、
これは明るく開放的で、且つアペルトにならない高音を出せるようにするためのテクニックの一つですね。
同じ母音でも、音域によってこの辺りを上手く調節して、パッサージョ&アクートをこなすのが優れたテノールの特徴の一つと言えるかもしれません。
声楽を勉強してるテノールはガンチの歌唱を研究すると良いと思います。
Simone Alberghini
ザネッラート同様響きのポイントが低く、母音が解放し切れていないこともあってレガートが甘い。
ガンチやフロンターリと比較すると発声的に課題が多いのは明白です。
<こうもり>
アイゼンシュタイン:ジョナサン・マクガヴァン
ロザリンデ:エレオノーレ・マルグエッレ
フランク:ヘンリー・ワディントン
ファルケ博士:トーマス・タツル
アデーレ:シェシュティン・アヴェモ
アルフレード:伊藤達人
オルロフスキー公爵:タマラ・グーラ
Jonathan McGovern
中音域の響きは安定感があり、温かみのある音色も相まって実に心地よい声をしています。
ただ高い音域になると、特に”a”母音や”o”母音をフォルテで出す時は、低い音域から口を開け過ぎるので、響きのポイントが落ち易い傾向があって、低い音域程の魅力は感じられないのが課題か。
Eleonore Marguerre
最近の演奏音源がないので、現在どうなっているかがわからないのですが、
この演奏を聴く限り、息を太く使い過ぎていて、母音の質が不ぞろい。
オペレッタとなると尚更感情に任せた歌唱になる可能性が予想されるので、劇的な部分では面白い演奏になるかもしれませんが、演劇的な要素よりも、声楽的なフォームを壊さない範囲での演奏を求める聴衆にとってはあまり歓迎されない。そんな演奏になりそうな予感がします。
Henry Waddington
声種はバスと書かれていましたが、重々しくないバリトン寄りの声質で、喜劇作品を歌うのにぴったりなキャラクターなので、このキャストはハマるのではないかと思います。
安定したフォームでしっかり喜劇的な役を歌える歌手は貴重ですね。
Thomas Tatzl
線が決して細い訳ではないのですが、響きのポイントが上手くハマッていないと言えば良いのか、
弱音の響きは悪くないのですが、フォルテにすると無駄に口を開け過ぎて落ちてしまって、逆に響かない声になっている気がするのは私だけでしょうか。
伊藤達人(23:30~)
喉締めて響き集めるタイプの歌唱ですね。
下半身との響きが使えてないので上半身だけの響きで歌っているように聴こえてしまう。
Tamara GURA
悪い意味で重く暗い響きで、言葉が前でサバけてないので、
”la”という一言をとっても、音域によって音質がブレてしまってて、これでドイツ語のオペレッタを上手く歌えるのか正直疑問です。
Kerstin AVEMO
上半身の響きだけで歌っていて、全然レガートで歌えていないので、ちょっとコレでは厳しい。
このレベルなら日本人歌手を起用した方が良い。
<こうもり>と、<シモン・ボッカネグラ>のキャストを比べると、明らかにレベルに差がありますね。
特にフロンターリとガンチ様々な歌手と比較していると、やっぱり流石だな~というのが改めてわかります。
この続きはまた次回書いていきます。
[…] 2023-24シーズンの新国立劇場キャストについて、前回の続きになります。 前回の記事をまだご覧になっていない方はまずコチラをご覧ください。 […]